DNCとは? | エース・インテック有限会社

DNCとは?

Direct(直接) Numerical(数値的) Control(制御)の略です。
NC機は、ご存知のようにXYZの座標データをもとに工作機械の動きを制御する機器です。その座標データをNC機に供給する方法として、かつては紙テープが主体でした。
たしかに、紙テープにも捨てがたい良さはありました。粉塵や油などの汚れにめっぽう強く、物理的な記憶媒体(8ビット2進数の穴表示なので目でデータを確認出来ます)ですから、何といっても安心感がありました。
しかし、かさばるので保存管理が大変で、また長い連続加工(最大テープ長は240m程度)などとても出来ませんでした。 それに代るものとして現れたフロッピーは、紙テープよりは随分マシですが、汚れに弱く、また所詮1M(メガ)の世界で、それがNC加工の限界も決めてしまいました。
コンピュータは、データの保存管理を最も得意とし、忠実で、指示をしておけば、夜間でも休日でも黙々と動き続けます。しかも安く高性能になりました。パソコンのハードディスクは、今やギガ(1ギガ=1000メガ)の世界です。しかも、LANが発達していて、ネットワーク化されたCAD/CAMとDNCシステムの間のデータ転送にかかる時間は従来の数百分の1です。操作も簡単です。
一方で、CAD/CAMの発達と普及により大量の加工データがそこでどんどん作られます。そして、ネットワークでつながったDNCシステムにどんどん高速転送しています。さらにそこから、安定度の高い光ファイバケーブルで、工場内の各NC機器に、ジャスト・イン・タイム(必要なとき・必要な場所へ・素早く)で送られて行きます。



DNCの効果

それではDNC化すると、具体的に何が出来るようになるのでしょうか。
まず第一に、長い連続加工が出来ます。従来ですと、NC装置のメモリ容量や、紙テープ1巻の長さ、あるいはフロッピーの容量に制約を受けていました。加工の途中で紙テープやフロッピーを掛け替える作業が必要なため、人手がかかり、無人化を妨げていました。その掛け替え作業のため、どうしても急ぎで加工しなければならないときは、一晩中、NC機に人が張り付いたなんてこともよくあったようです。
パソコンは、ハードディスクの中に多量のデータを持つことが出来ます。2ギガとか3ギガとか。
1ギガ(1000メガ)はテープ長換算で250万mにもなります。このパソコンとNC機とをオンラインで結べば、NC機にどんどんデータを送り続けることが出来るのですから、従来では考えられなかったような長時間連続運転が可能になります。これがDNC化の第一の、そして最大の利点です。
いま、人間工学の発達にも触発されて、デザイン技術の進化にはいちじるしいものがあります。人の手になじむもの、人の視覚に違和感のないものなど、CAD/CAMの進歩と相まって、金型製作には、ますます複雑な曲面加工が求められています。当然それは大量な点群データによる3次元加工でなければ不可能ですから、そのデータ量はいまや膨大なものになってしまっています。人手を介してテープやフロッピーの掛け替え作業をしていては、とても対応出来ません。コストも高く付きます。お判りのこととは思いますが、いまは人件費が一番高いのです。残業すれば、時間単価が割高な残業代がかかります。深夜ならばなおさらです。
ところが、NC機を無人で稼動させるならば、増えるコストは知れています。それどころか、これまで8時間しか稼動していなかったNC機を、24時間稼動させることが出来れば、設備を3倍に増やしたことと同じ加工能力を得ることが出来ます。
現実に,DNC化によって金型業界ではコスト革命がおきました。
すでに、DNCシステムなくしては、最新のデザイン要求に応えられる金型製作は出来ません。
パソコンは、事前に適正な指示をしておけば、その通りに忠実に実行してくれます。
当社のDNCシステムでは、NC機のサブルーチンコール機能と同じような形で、パソコンのディスクの中に別々にはいっているデータをつなげて送ることが出来る機能があります。
例えば、
パソコンのディスクの中に、O0010、O0020、O0030の3本のNC加工データが登録されているとき、

O0001;
M98P(O0010);
M98P(O0020);
M98P(O0030);
M30;

というメインプログラムを作成し、このメインプログラムを送信させれば順次、O0010、O0020、O0030の内容を送り出していきます。
Lを使って繰り返し指定も出来ますし、ネスト(入れ子)も10回まで 出来ます。もちろん、M99は削除して送ります。考え方は、NC機のメモリーの中で行うM98P×××コードによるサブプログラム呼出しと同じ考え方です。
実は、このサブファイルコール機能が、連続無人運転加工を簡単に実現出来る秘密なのです。例えば、荒取り、中仕上げ、仕上げなどを、別々のデータで、NC機のATC機能を利用しながら順次加工していく方法や、同じデータを何回か繰返す多数個取り加工を、一連の連続加工でやってしまう方法です
データの転送スケジュールを組立てることは、パソコン側で簡単に出来てしまいますから、連続加工だからといって、一連の長いデータを事前につくっておく必要はありません。
この連続無人加工をすでに実践している企業では、正月休みやゴールデンウィーク、盆休みの前には、責任者が、いかに休みの前までに仕事を終わらせるかではなく、いかに休みの間も無人で工場を稼動し続けるように段取りをするかで悩んでいます
他社の工場を昼間に見学される機会があったとき、もし、加工中でないNC機が多かったとしても、稼働率が低い工場だと早合点しないほうが良いかもしれません。昼間は、人でなければ出来ない段取作業のみが行なわれ、そのかわり夜間には情景が一変して、誰もいない暗闇の中で、すべてのNC機が黙々とフル稼動する工場なのかも知れません
第2の効果は、NCデータの管理が非常に容易になることです。現実に、紙テープやフロッピーの管理にはたいへんな労力と手間を要します。
折ったり、破ったりしないように神経も使わなければなりませんし、本数が多くなれば保管する場所も必要で、捜し出すのもたいへんです
その点、コンピュータはデータを管理するための機械ですから、NC加工データを保存管理することなど朝飯前です
保存している加工データのリストアップ、欲しいデータの即時取出し、こんなことはお手のものです。



RS232Cの通信ポートが無いNC機の場合

一番確実なのは、機械メーカーに頼んでRBUをオプションで後付けしてもらうことです。でも、費用の面もありますし、機種によっては後付け出来ないものもあります。
「その場合はもうダメ?」
いいえ、私たちDNCシステム側にも、RBUに相当するオプション機器があります。これは、NC機のテープリーダ部に、NC858と呼ばれるボード機器をはりつけるのです。
そしてケーブルを一方はテープリーダ部の出力コネクターに、もう一方をNC機本体内部の、本来テープリーダ部からの信号を受け取る入力コネクターに繋ぎます。そうしておいてパソコンからRS232Cの通信でそのNC858にプログラムを送ると、NC機があたかも紙テープを読んでいるようにNC858が動作します。だからテープ運転モードが可能ならOKです。NC機の操作は紙テープを読込む場合とまったく同様に行えます。
よほど古くなればメーカー・型式を問いません。機種によっては特別仕様に変更する必要もありますが、事前調査で見極めがつきますよ。
それともう一つ、このNC858の利用価値があります。それは古いNC機でメモリーが無い、つまりテープ運転しか出来ない機械につけて、パソコンと接続してやれば、パソコンがメモリー代りのような使い方が出来ると言うわけです。たった一文字書き直すのに新しい紙テープを作る必要はなくなると言うわけです。
このNC858を使えば、NC機にメモリへの通信ポートやRBUがなくてもメモリへのダウンロードやオンラインによる連続運転加工が可能になります。



加工速度とボーレート

一般的には、送り速度と、加工ピッチで、必要なデータ量/時間が決ります
たとえば、送り速度=600mm、加工ピッチ=0.2mmピッチの場合はどうなるでしょう
送り速度は mm/分で良く言われます。つまり送り600mmと言うのは、一分間に600mm分加工をするということです。1秒間では10mm。
加工ピッチと言うのは、加工データの座標点の間隔がどれだけあるかを意味します。 0.2mmピッチの場合、1mm加工する為に通常5データ(5ブロック)必要だということになります。
10mmだと、50ブロックのデータが必要です。つまり1秒で50ブロックです
1ブロックが仮に20文字だとすると、1秒で1000文字(バイト)が必要という事になります
さらに、ボーレートはビット単位ですから、1文字が11ビット(スタートビット1+データビット8+ストップビット2=11)とすると、1秒で11000ビットのデータが必要です。
ボーレート9600は、1秒間に 9600ビットが最大限という事ですから、ちょっと足りないかなァ、19200にしないといけないかなと言う話になります。
もし、加工ピッチが更に0.1mmだとか、送り速度が1200mmだとかの場合は、この倍のデータ通信能力が必要になってきます。ボーレートを38400に上げて下さい。
ただし、ボーレートが19200を超える場合は、プロトコルBではNC機がデータを受け損なう可能性が高くなります。(たとえNC機側でプロトコルBでも19200を超える設定が出来るようになっていたとしても)プロトコルBでは19200まで。それを超える場合は、データを受け損なっても再送が可能なプロトコルAで通信する事をお勧めします。